「ファイナンシャル・プランナー(FP)」という肩書きは、実は誰でも名乗ることができます。国家資格である「FP技能士」や、民間資格の「AFP」「CFP」といった認定がなくても、名刺やウェブサイトに「FP」と書くこと自体は法律上の制限がありません。
つまり、資格を持っていなくてもFPを名乗る「自称FP」が存在するということです。ここで重要になるのが「資格のあるFP」と「資格のないFP」の違いです。
国家資格としてのFP技能士
日本において、ファイナンシャル・プランナーの国家資格にはFP技能士があり、難易度に応じて3級・2級・1級に分かれています。
- 3級FP技能士:生活に役立つ基本的な知識レベル。金融機関の新人研修や、一般の方がライフプランを学ぶ入門資格です。
- 2級FP技能士:実務的な相談にも対応できるレベル。一般的なFP業務では、最低限この2級以上が望ましいとされます。
- 1級FP技能士:高度な金融・税務・不動産・相続等の知識と、実務経験が求められる上位資格。法人や資産家向けのコンサルティングで評価されます。
民間資格のAFPとCFP
FP技能士に加えて、民間資格であるAFP/CFP(日本FP協会認定)も、信頼性を見極める指標になります。
AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー):おおむね2級相当の実力があるとされ、協会登録と継続研修(単位取得)が義務づけられます。
CFP(サーティファイド・ファイナンシャル・プランナー):AFPの上位国際資格。6科目にわたる高度試験をクリアし、倫理・専門性・継続学習が厳格に求められます。CFP保持者は、深い専門知識と学び続ける姿勢を対外的に示しているといえます。
ダブルライセンスの所持者(例:FP+宅建士、FP+社労士 等)
FPの知識に加え、宅地建物取引士(宅建士)、社会保険労務士(社労士)、税理士など他分野の国家資格を併せ持つFPは、より実務に即した横断的アドバイスが可能です。
- FP+宅建士:住宅購入・売却の法的留意点、媒介や契約実務の注意点まで踏み込める。
- FP+社労士:年金・社会保険制度に強く、定年・老後の設計で力を発揮。
- FP+税理士:相続・贈与・資産運用の税務までトータルに助言(※税務代理・申告は税理士業務)。
こうしたダブルライセンス保持者は、分野横断で「一歩深い助言」を期待できる存在です。
結論:FPを選ぶ際は「資格」と「実績」の両方をチェック
FPに相談する際、「無料か」「親身か」も大切ですが、どの資格を持ち、どれほどの知識・経験があるのかの確認が何より重要です。名刺に「FP」とあるだけでは守備範囲は分かりません。
ホームページや名刺で「FP技能士(1・2・3級)」や「AFP・CFP」の記載があるか、ダブルライセンスを持つか、継続学習・執筆・登壇等の実績があるか? 等をチェックすると、信頼できる相談相手に近づけます。
FPは人生のお金の相談窓口。だからこそ、しっかりとした資格と姿勢を持つ人に相談することが、将来を左右すると言っても過言ではありません。
相談する前の情報…失敗を避けるために
上記を踏まえ、実際に相談先を選ぶとき・初回面談に臨むときに役立つ、三つの視点をご紹介します。
1.立場と報酬モデルを理解する(独立系FPと企業系FP)
同じ「有資格者」でも、立場(独立系/企業系)と報酬モデルで提案の色合いは変わります。
独立系FPの場合は「相談料・顧問料・講師料など、相談者からのフィー(報酬)が主となります。中立性は高いのが一般的。
企業系FP(保険・銀行・証券・不動産等に所属)の場合は「相談自体は無料が多い一方、最終的に自社商品(保険・投信・住宅等)の販売で収益化するため、提案が販売前提になりやすい面も少なからずあります。
どちらが正しい/間違いではありません。大切なのは、「誰から報酬を受け取るモデルか」を理解し、助言の背景を読めるようにすることです。迷ったら、初回に報酬の流れ(フィー型か、販売手数料型か、混合か)を率直に質問しましょう。
2.テーマ別に「強いFP」を選ぶ
FPは守備範囲が広い分、得意分野の偏りがあります。テーマに合わせて選ぶと満足度が上がります。
- 住宅購入・売却/住宅ローン:FP+宅建士、CFP(不動産・ライフプラン領域に強い人)
- 老後資金・年金:社労士資格併有、年金相談の実績多数
- 相続・贈与・節税:税理士資格併有、もしくは税理士ネットワークと連携
- 投資・運用:CFP、証券外務員経験、ポリシー開示が明確
資格+実績(記事・登壇・事例)で裏付けを確認しましょう。
3.初回面談で必ず聞きたい「5つの質問」
初回の30~60分で、以下を確認するとミスマッチを防げます。これらに対して透明に答えられるFPほど信頼しやすいと言えます。
- 得意分野と支援範囲(どこまで対応でき、どこから他士業に引き継ぐか)
- 報酬の内訳とタイミング(無料範囲/有料に切り替わる条件/返金規定)
- 中立性の確保方法(特定商品や提携先との関係・紹介料の有無と開示)
- 守秘義務と情報の扱い(個人情報の保護方針、事例化する際の匿名化手順)
- 成果物とフォロー体制(ライフプラン表・チェックリスト・見直し頻度)
よくある誤解と補足
資格がない=ダメ、資格がある=必ず安心という単純な話ではありません。無資格でも実務が秀でている人はいますし、有資格でも相性が合わないことはあります。目安として、資格は最低ラインの品質保証、最終判断は実績と説明の透明性、相性を見ると良いでしょう。
税務申告・税務代理、登記、社会保険の手続きなどは、それぞれ税理士・司法書士・社労士等の独占業務です。FPは設計・助言・伴走が役割で、手続きや代理は関係士業と連携するのが正しい進め方です。
「無料」を不安視する声もありますが、*意図(準備期間の実績づくり等)と範囲(初回のみ、メールのみ等)が明示され、勧誘の有無や紹介料の開示が徹底されていれば、有効に活用できます。
まとめ:資格で入口を絞り、透明性で本命を選ぶ
資格の有無・階級(FP技能士/AFP/CFP)で最低限の基準を満たす相手を絞る。
ダブルライセンス・得意分野・成果物で、自分のテーマに強い相手を選ぶ。
報酬モデルと中立性の開示、守秘と個人情報の扱いが透明なFPを最終候補に。
この三段階を踏めば、「肩書きは同じなのに中身が違う」問題で後悔する可能性は大きく下がります。FPは、あなたの将来に長く影響する意思決定を支える伴走者。資格・実績・透明性を軸に、納得のいく相手を選んでください。