住宅の購入や売却は、大きなお金が動く人生の一大イベントです。そのため「相談したら買わされるのでは?」「売却を急かされるのでは?」と、不安を感じる方も多いかもしれません。
この不安の背景には、“FP(ファイナンシャルプランナー)”の立場や活動スタイルによって、対応が異なるという点があります。以下に、よくある3つの立場ごとの特徴を解説します。
企業に雇われているFP(保険会社・不動産会社など)
保険会社や不動産会社などに勤務しているFPは、その会社のサービスや商品を前提にライフプランの提案を行います。たとえば、住宅販売会社に勤務するFPであれば、「自社物件の購入」を前提とした提案になる可能性が高くなります。
この場合、相談そのものは無料で中立的に見えても、最終的には“売るための相談”に向かっていく構造があります。提案が偏る傾向にあるため、中立性に注意が必要です。
独立系FP(完全に企業から独立している)
独立系FPは、保険会社や不動産会社などから独立した立場で相談業務を行っており、商品を販売することが目的ではありません。したがって「住宅を買うか・売るか」という判断は、あくまで相談者本人が決めるもので、FPはそのための材料を提供する立場です。
また、独立系FPは“信頼”と“中立性”が評価に直結するため、強引な勧誘や偏った提案を行うメリットがなく、相談者の立場で伴走する姿勢が基本です。
これから独立するFP(準備中・相談実績を積む段階)
このようなFPは、現在は副業・準備中で無料相談を通して相談経験や信頼を積み重ねているケースが多いです。資格は持っているものの、まだ商業的な目的(契約獲得や商品販売)がなく、より純粋に「誰かの役に立ちたい」「実績を積みたい」という動機で活動している傾向があります。
この段階のFPは特に「販売ノルマ」などが存在しないため、住宅の購入・売却を強く勧めるような必要がそもそも存在しません。
その他の分類:提携型・相談窓口型など
近年では「不動産会社×FP」「ハウスメーカー×FP」のような提携型相談も増えています。この場合も、表向きは中立ですが、最終的には提携先の商品につなげる意図があることが多いため、無料相談でも目的を見極める意識が重要です。
一方で、地方自治体やNPO団体が提供する無料FP相談などは、完全に中立な立場で運営されていることが多く、安心感があります。ただし、相談時間が短い、テーマが限定されているなどの制約もあります。
相談は「判断の材料」を得る場であり、決断を迫られる場ではありません。FPへの相談は、購入や売却を勧めるためではなく、“どう判断すべきか”を一緒に整理するためのものです。
特に独立系FPや準備中のFPは、中立性が高く、勧誘する理由がありません。実際、筆者自身も過去の失敗からFP資格を取得し、中立な立場で「相談者が自分で納得して判断できる」ことを重視したサポートを行っています。
「今のタイミングで家を買っていいのか?」「売却するしか方法がないのか?」──そんな迷いを解きほぐすのが、私たちFPの役割です。相談したからといって売買を勧めることはなく、むしろ“買わない・売らない選択肢”も含めて、一緒に考える立場であることをぜひ知っておいてください。
相談を安心して活用するための考え方
住宅の購入や売却は、多くの人にとって一生に数回しか経験しない大きなライフイベントです。そのため、「相談したら無理に勧められるのでは?」という心配はとても自然な感情です。
しかし実際には、FP相談を有効に使うことで、むしろ自分の判断を冷静に整理できるようになります。ここでは、相談時に意識しておくと安心できるポイントを整理します。
1.FP相談の「目的」を明確にする
最初に大切なのは、自分がFPに何を求めているのかをはっきりさせることです。
「今の収入で住宅ローンは無理なく返せるか知りたい」
「売却した場合の手取りがどのくらいになるか確認したい」
「買う・売る以外の選択肢も検討したい」
このように“お金の計算や判断材料の整理”に焦点を当てれば、FPは中立な立場でシミュレーションやアドバイスを提供してくれます。
2.相談時のチェックポイント
相談者が安心して話を進めるためには、次のような点に注目すると良いでしょう。
提案の根拠が数字で示されているか(キャッシュフロー表、返済計画、資金シミュレーションなど)。
複数の選択肢を提示してくれるか(購入する場合、しない場合、売却する場合など)。
「必ずこうすべき」という押し付けがないか。
これらを確認することで、相談が「販売目的」か「中立な助言」かを見極めやすくなります。
3.相談をより有効にする工夫
FP相談を単なるアドバイスの場に終わらせず、「将来の安心」につなげるための工夫も大切です。
事前に家計の収支やローン残高、資産状況を整理して伝える。
気になっている物件や売却予定の不動産情報を持参する。
相談内容をメモに残し、後から家族と話し合う材料にする。
こうすることで、FPから受けた情報を自分の意思決定にしっかり活かせます。
4.「買わない」「売らない」という選択肢も大切
多くの人は「相談=取引を決める場」と考えがちですが、実際には「相談=考えを整理する場」です。特に独立系FPは「買わない」「売らない」という結論に至っても、それを尊重し、むしろ無理な選択を避けられるようサポートします。
まとめ
住宅購入や売却を相談しても、必ずしも勧められるわけではありません。むしろ、正しい情報と冷静な判断を得るための“安心の場”として相談を活用することができます。相談の本質は「決断を迫られる場」ではなく「納得して判断できるための準備の場」です。